2006年 08月 14日
Q&A 建築家(設計者)てなにするひと? |
最近家づくり、リフォームを考えておられる方とメールのやりとりをする機会があり、その中で建築家(設計者)とはそもそも何をするひとなのか? 実際に施工する施工者が大事なのはわかるが設計者にはどういう役割があるのか? という疑問を投げられました。
他のひとにも聞いてみるとわりと一般的な疑問のようなので、Q&Aということで取り上げたいと思います。
ちなみに建築家(設計者)にはいろいろな人がいて、それぞれ自分の役割だと思っていることは違っていたりもしますので、これは小口アトリエ特有のものかもしれませんが…。
Q1.建築家(設計者)の職能について
まず、建築家(乃至は設計者)という職能=プロフェッションは、スペシャリストであると同時にゼネラリストでもある、と考えています。設計の専門家であるだけでなく、クライアントと話を始めてから、クライアントが本当に望む暮らしを手に入れ、それを維持していくまでについて、その全体をみていく立場にあると考えています。
具体的には以下の作業を行います。
クライアントと話をして、その言葉のままでなく本当にクライアントが望む暮らしのために必要なものが何かを探り、また話しあい、調査を行い、行為と空間の関係や造形的なデザインを検討し、設備・工法などのエンジニアリング等もふまえて総合的に計画し、図面を作成し、積算し、最適な材料を選び、施工するチームを作り(工務店選び)、そして図面の通り施工されているか監理し、できたものが適切に機能し続ける事を確認します。
これら一連の流れの中で、施工が始まるまでのたくさんの作業をまとめて設計と呼びます。設計の作業の中に、最終的な出来を大きく作用する内容があれこれ入っていることがおわかりいただけると思います。工務店に直接依頼する、ということは、依頼する側は設計を期待していないとしても、工務店の誰かが設計者としての沢山の仕事をしている、ということになります。
Q2. 昔ながらの日本における普請とはちがうのか
確かに日本では昔から、そうした建築家のプロフェッションに近い役割を、旦那衆と棟梁が担ってきました。住まいや建築に造詣の深い旦那衆とその馴染みの棟梁がいて、ちょっと屋敷をいじりたい、と旦那がいえば、旦那の好みも旦那の屋敷のことも何でも知っている、地元の顔なじみの大工の親分が、仲間の職人と旦那好みの材木を抱えてやってきて、旦那好みの造作をあつらえて一丁上がり、万が一不都合があればまた即座にすっ飛んできていつでも手直しをしてくれる。戦前くらいまでは誰でも家をつくるというわけではなかったので、そうした古きよきつくりかたが実は日本では一般的でした。
もしそうした信頼できる親しい関係の、地元の馴染みの腕のよい、旦那の暮らしぶりをよくわきまえた棟梁が今でもいらっしゃるなら、確かに設計者など必要ありません。そうした貴重な人と人とのつながりを大事にしていただきたいと思います。
Q3最近の施工者と設計者の役割分担はどうなっているか
ただし、一般的な話としては、最近の施工者は社会の変化に対応して、昔の棟梁のようではなく、施工のスペシャリストになりつつあるようです。
というのも、人々のライフスタイルが多様になり、色々な暮らし方をされるようになり、家に求めるものもそれぞれに異なるようになったとき、それに相応しい空間や間取りを臨機応変に計画していくことは、経験から間取りを考える棟梁では難しいものがあります。
また建築材料や設備手法等も沢山新しいものができてきて、それらの情報をなるべく多く収集し、それらを比較検証し今回の計画に最適なものがどれかを見極める、といった作業も、施工を専門とする工務店などでは、なかなか手間がかかって難しいと考えられます。(自分が設計者だからこう思うわけですが…。)
ですから施工者に設計と施工を両方頼んだ場合、設計の大部分は、色々な可能性の中から一番適切と判断したものをつくるというよりは、使い慣れた手近にあるものでつくられることが多いと思います。
そこで設計者と施工者がチームを組んで、設計者が全体を見ながら設計を行い、それを元に施工者がつくる、というやり方が意味を持ってくると考えます。旦那と棟梁の二人三脚だったのを、クライアントと施工者と設計者が役割分担して3人のチームとすることで、最適な計画が出来ると考えています。
最近の工務店の中には、ちゃんとした設計チーム(申請用の図面や大工の言いなりの図面を書くのではない)を持っていて設計から全体の取りまとめまでをみる体制を組んでいるところも少しずつ現れていますが、今のところは希少な存在です。
クライアントにたっぷりと考える時間があり、馴染みの棟梁がいて昔ながらの普請ができるのであれば、クライアントと棟梁でじっくりつくられるのがよいと思います。けれどもそうした棟梁に心当たりがないのであれば、同じようなつくりかたをするのではなく、設計者と施工者とのチームでつくることをお薦めします。
クライアントに代わって、計画から施工までをずっと総合的な視点でみていくことが、設計者なら出来ると考えるからです。
他のひとにも聞いてみるとわりと一般的な疑問のようなので、Q&Aということで取り上げたいと思います。
ちなみに建築家(設計者)にはいろいろな人がいて、それぞれ自分の役割だと思っていることは違っていたりもしますので、これは小口アトリエ特有のものかもしれませんが…。
Q1.建築家(設計者)の職能について
まず、建築家(乃至は設計者)という職能=プロフェッションは、スペシャリストであると同時にゼネラリストでもある、と考えています。設計の専門家であるだけでなく、クライアントと話を始めてから、クライアントが本当に望む暮らしを手に入れ、それを維持していくまでについて、その全体をみていく立場にあると考えています。
具体的には以下の作業を行います。
クライアントと話をして、その言葉のままでなく本当にクライアントが望む暮らしのために必要なものが何かを探り、また話しあい、調査を行い、行為と空間の関係や造形的なデザインを検討し、設備・工法などのエンジニアリング等もふまえて総合的に計画し、図面を作成し、積算し、最適な材料を選び、施工するチームを作り(工務店選び)、そして図面の通り施工されているか監理し、できたものが適切に機能し続ける事を確認します。
これら一連の流れの中で、施工が始まるまでのたくさんの作業をまとめて設計と呼びます。設計の作業の中に、最終的な出来を大きく作用する内容があれこれ入っていることがおわかりいただけると思います。工務店に直接依頼する、ということは、依頼する側は設計を期待していないとしても、工務店の誰かが設計者としての沢山の仕事をしている、ということになります。
Q2. 昔ながらの日本における普請とはちがうのか
確かに日本では昔から、そうした建築家のプロフェッションに近い役割を、旦那衆と棟梁が担ってきました。住まいや建築に造詣の深い旦那衆とその馴染みの棟梁がいて、ちょっと屋敷をいじりたい、と旦那がいえば、旦那の好みも旦那の屋敷のことも何でも知っている、地元の顔なじみの大工の親分が、仲間の職人と旦那好みの材木を抱えてやってきて、旦那好みの造作をあつらえて一丁上がり、万が一不都合があればまた即座にすっ飛んできていつでも手直しをしてくれる。戦前くらいまでは誰でも家をつくるというわけではなかったので、そうした古きよきつくりかたが実は日本では一般的でした。
もしそうした信頼できる親しい関係の、地元の馴染みの腕のよい、旦那の暮らしぶりをよくわきまえた棟梁が今でもいらっしゃるなら、確かに設計者など必要ありません。そうした貴重な人と人とのつながりを大事にしていただきたいと思います。
Q3最近の施工者と設計者の役割分担はどうなっているか
ただし、一般的な話としては、最近の施工者は社会の変化に対応して、昔の棟梁のようではなく、施工のスペシャリストになりつつあるようです。
というのも、人々のライフスタイルが多様になり、色々な暮らし方をされるようになり、家に求めるものもそれぞれに異なるようになったとき、それに相応しい空間や間取りを臨機応変に計画していくことは、経験から間取りを考える棟梁では難しいものがあります。
また建築材料や設備手法等も沢山新しいものができてきて、それらの情報をなるべく多く収集し、それらを比較検証し今回の計画に最適なものがどれかを見極める、といった作業も、施工を専門とする工務店などでは、なかなか手間がかかって難しいと考えられます。(自分が設計者だからこう思うわけですが…。)
ですから施工者に設計と施工を両方頼んだ場合、設計の大部分は、色々な可能性の中から一番適切と判断したものをつくるというよりは、使い慣れた手近にあるものでつくられることが多いと思います。
そこで設計者と施工者がチームを組んで、設計者が全体を見ながら設計を行い、それを元に施工者がつくる、というやり方が意味を持ってくると考えます。旦那と棟梁の二人三脚だったのを、クライアントと施工者と設計者が役割分担して3人のチームとすることで、最適な計画が出来ると考えています。
最近の工務店の中には、ちゃんとした設計チーム(申請用の図面や大工の言いなりの図面を書くのではない)を持っていて設計から全体の取りまとめまでをみる体制を組んでいるところも少しずつ現れていますが、今のところは希少な存在です。
クライアントにたっぷりと考える時間があり、馴染みの棟梁がいて昔ながらの普請ができるのであれば、クライアントと棟梁でじっくりつくられるのがよいと思います。けれどもそうした棟梁に心当たりがないのであれば、同じようなつくりかたをするのではなく、設計者と施工者とのチームでつくることをお薦めします。
クライアントに代わって、計画から施工までをずっと総合的な視点でみていくことが、設計者なら出来ると考えるからです。
by ryo-oguchi
| 2006-08-14 16:50
| 家のはなし